[記事のポイント]

(1) 2015年、トヨタの主力車種「カローラ」の衝突回避システムに、本命デンソーを押さえて独コンチネンタルが採用され衝撃が走った

(2) 買収で技術力と価格競争力を手にしつつ巨大化した欧州メガサプライヤーは、自動運転などで要求されるシステム全体の提案力も高い

(3) 日産自動車が系列解体を完了した一方で、トヨタは「アメとムチ」で欧州勢とも付き合いつつ系列部品会社の再編で結束強化を狙う

 

トヨタは系列の新たな形を構築しようとしている。写真はトヨタ自動車九州の工場(AFP=時事)

トヨタ系列のサプライヤーに衝撃が走った“事件”がある。

2015年3月にマイナーチェンジしたトヨタ自動車の主力車種「カローラ」に初めて搭載された衝突回避支援システム「トヨタセーフティセンスC」。採用されたのは、本命と見られていたトヨタ系最大手のサプライヤー・デンソーではなく、独大手コンチネンタルのものだった。

衝突回避システムはレーザーレーダーと単眼カメラで構成される、自動運転技術にもつながる重要な製品だ。「まさか、あのデンソーが負けるとは……」。“デンソーショック”は、系列のサプライヤーには相当なサプライズだった。

トヨタ向けに最初に開発したのはデンソーだったが、後発のコンチネンタルがコスト競争力(=価格)で勝った。コンチネンタルは欧州全域でレギュレーションをクリアし、欧州車で搭載が標準化されたのを武器に、トヨタへ提案。デンソーは外堀を完全に埋められた格好だった。「性能はデンソーが勝っていた。だが、価格と標準化という要素でコンチネンタルが上だった」と、経緯を知るトヨタ関係者は明かす。

デンソーは汚名返上とばかりに、ミリ波レーダーと単眼カメラを使った、歩行者まで認識できる上級車種向けの「トヨタセーフティセンスP」で受注を取った。デンソーの松井靖常務役員は、「自動運転技術は最近までボッシュ(独)やコンチネンタルに遅れていた。だがトヨタに技術を認められ、高機能のシステムは当社でやらせてもらった。彼ら(メガサプライヤー)を追い抜いたとは言わないが、追いついたと思う」と話す。

いずれにしても、買収を繰り返し巨大化したボッシュやコンチネンタル、ZFなどドイツ勢中心のメガサプライヤーが幅広い商品群で実力を高め、トヨタの“ケイレツ”に穴を開け始めているのは確かだ。ゴム系部品を扱う日系サプライヤーの首脳は、「これまでトヨタ向けは日系3社の競争だった。だが、最近はドイツ系の2社が新たに入ってきた。まだ失注はしていないが、デンソーの二の舞にならないように、いいものを安く作って応えていくしかない」と気を引き締める。

トヨタは「コストが安く品質がいいものなら採用する」という従来の調達方針を変えたわけではない。

むしろ、メガサプライヤーが力をつけてきたというのが実態だ。特に自動運転や電動化の分野では、単品ではなく、さまざまな部品をまとめたシステムを提案する力が要求される。海外のメガサプライヤーはこの点が得意だ。一方、日系のサプライヤーはトヨタを頂点とするピラミッド構造で、上から下への発注が基本のため、「システム全体での提案をあまりやってこなかった」(トヨタ関係者)。

欧州型のまねではない新たな系列の形を模索

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