2014年12月に発売された「MIRAI」。トヨタのFCV第1弾として、経営陣が大きな期待をかけている(撮影:梅谷秀司)

100年先を見据えるとして、トヨタ自動車が開発に最も力を入れている燃料電池自動車(FCV)。水素と酸素を化学反応させて電気を作る燃料電池を搭載し、モーターで走行する車だ。今、トヨタはこのFCVの開発で「理想と現実」の狭間にいる。

トヨタのFCV開発に関する歴史は1992年にさかのぼる。この頃、世界の自動車メーカーはガソリンに代わる燃料車の基礎研究を進めており、アルコール燃料車、水素自動車、電気自動車などさまざまな可能性を模索していた。その中でFCVは実用化に向けた技術開発の壁が最も高かった。研究者や技術者にとって、FCVはまさに「理想の車」だったのだ。

その後、97年にエンジンとモーターを併用して走る世界初の量産ハイブリッド車(HV)「プリウス」が発売され、トヨタの次世代車開発は前進した。そして2014年12月、トヨタのFCV戦略で要となる「MIRAI」は発売された。当時は国が主導する水素社会の実現に向けた動きに後押しされ、MIRAIに関する期待は高まっていた。