【今週の眼】小峰隆夫 大正大学地域創生学部教授
こみね・たかお●1947年生まれ。東京大学卒。経済企画庁経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長などを経て、2017年4月から現職。日本経済研究センター理事・研究顧問も務める。著書に『人口負荷社会』『日本経済論の罪と罰』『政権交代の経済学』など。(撮影:尾形文繁)

政府は働き方改革の実行計画を決めた。本稿ではこれを二つの観点から評価してみたい。一つは現実的な観点であり、労使の合意が得られる範囲でどこまで改革を進めることができたかを問うものだ。もう一つは、理想的な観点であり、最も望ましい改革が実現しているかを問うものだ。

まず現実的な観点からは、今回の政府の働き方改革は成功したといえる。何よりも社会全体で「働き方を変えることが重要だ」という認識が常識化したことの意味は大きい。企業も本気で残業時間の削減を始めている。日本は横並びの国だから、各企業が他社をにらみながら一斉に働き方の見直しを進めれば、改革はかなり急ピッチで進む可能性がある。政府が音頭を取って働き方改革のきっかけを作ったことの意義は大きい。

また、残業時間規制や同一労働同一賃金について、現段階で考えうる範囲としてはほぼ満足できる水準で労使が合意したことも重要だ。残業時間については、より厳しい上限が課されることになったし、同一労働同一賃金についても、賃金だけでなく、賞与、福利厚生も含めて正社員と非正社員との間に不合理な待遇差を設けないこととされた。大きな前進である。

しかし、私自身の理想的な観点からは不満が残る。それは次の2点である。