1990年代以降、日本では長期にわたり低成長の時代が続いている。何が経済成長を抑制しているのか、成長会計の考え方を用いて見てみよう。

GDP(国内総生産)の増減は投入する労働、資本、TFP(全要素生産性)の変化によって決まる。その内訳を示したのが図表1だ。労働投入量はさらにマンアワー(労働者数×労働時間=総労働投入量)と労働の質(労働者の学歴や性別など)に分けられ、資本も量と質(減耗率)に分けられる。

[図表1]
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TFPは技術進歩や効率化など、資本と労働の増加以外の要素を含む。なお日本政府は昨年、GDPの算出方法を変え、研究開発費を従来の経費ではなく設備投資に入れることにしたため、今後はその分がTFPから資本に振り替えられる。

RIETI(経済産業研究所)と一橋大学経済研究所の共同研究では、労働の質は上昇傾向にある一方で、90年代以降、TFPの下落が顕著だ(図表1)。一橋大学の深尾京司教授は「製造業が生産拠点を海外に移転したことと密接に関係している」と分析する。

製造業では70年代以降、TFPが上昇してきたが、90年代以降は製造拠点を海外に移すため「大企業において生産性の高い工場が閉鎖され、生産性の低い小さな工場の退出効果を打ち消している。サプライヤーとの垂直系列関係が希薄化し、技術の伝授が減ったことで、中小企業の内部効果も下げてしまった」と深尾教授は話す。