「前代未聞の大統領選挙だ」。30年にわたりフランスの大統領選挙を見てきた東京外国語大学大学院の渡邊啓貴教授は、今回の異様さに驚きを隠さない。「本来、候補者の中には前大統領や前首相などがいるはず。今回は有力候補が排除されている」(渡邊教授)。現職のフランソワ・オランド大統領(左派・社会党)は昨年12月、早々に出馬を断念した。2期目の出馬をしないのは1958年に現行の政治体制が発足して以来、初めてのことだ。

右派、左派が公認候補を決める予備選挙でも、主要な候補者が次々と脱落した。右派・共和党ではニコラ・サルコジ元大統領やアラン・ジュペ元首相が、社会党ではマニュエル・ヴァルス元首相がそれぞれ敗北を喫している。

[図表1]
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(ロイター/アフロ)

現時点の世論調査で高い支持率を得ているのは、大統領・首相の経験がない二人だ。うち一人は無所属の若い候補者エマニュエル・マクロン氏。2014年から経済・産業・デジタル相を務めたが昨年8月に辞任し、11月に大統領選挙に立候補した。右にも左にも属さない「中道」を標榜。経済政策は自由主義的だが、弱者にも味方する。教育水準が高い都市部を中心に支持を得ている。

もう一人が極右政党「国民戦線」党首のマリーヌ・ルペン候補。「フランス第一主義」を掲げ、EU(欧州連合)離脱の国民投票実施や移民の制限を訴え、米トランプ大統領や露プーチン大統領を支持する。