昨年11月29日、大阪市内のホテルで華々しく発表されたJR西日本の豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」に関する詳細。だが、会場の話題をさらったのは、来島達夫社長が明言した「新たな長距離列車」の開発を検討するという情報だった。豪華列車は普通の人がおいそれと手を出せる価格ではない。「気軽に乗れる長距離列車を作りたい」と来島社長は以前から考えていたという。つねに等身大で物事を考える。その原点は「福知山線脱線事故」にあった。

西日本旅客鉄道(JR西日本)社長 来島達夫
きじま・たつお●1954年山口県生まれ。78年九州大学法学部卒業後、国鉄入社。87年JR西日本入社。広報室長、人事部長等を経て、2016年より現職。(撮影:尾形文繁)

──この30年で、最も重要な出来事は何でしょうか。

鉄道事業者として2005年に福知山線の列車事故を引き起こしてしまったことが最も重い。それ以前にも信楽線の列車事故(1991年)や東海道線の救急隊員死傷事故(02年)もありました。その都度安全対策を講じていたのですが、それでも福知山線事故を防ぐことができなかった。これこそ、この30年で最も反省すべき点だと考えています。

──福知山線事故の前と後では会社はどのように変わりましたか。

社員一人ひとりの思いは、会社発足当時から「安全第一」です。にもかかわらず事故が起きてしまったのはなぜか。個々の社員が具体的に何をすべきか、ということを全力で考えてきました。現在はリスクを拾い上げる努力を各職場でやっている。それがいちばん大きな変化です。

──ミスを自己申告すればペナルティを科さない制度にしました。

本人でしか知りえないリスク、あるいはヒヤリ・ハットは、本人が正直に報告するしか会社としては把握しようがない。ペナルティを科さないゆえに正直に報告してもらう。その積み重ねが大事なのです。

──乗客が通報した乗務員のミスにはペナルティが科されますか。

発覚の仕方がどうこうというのは、次の段階の話です。たまたま乗客が目撃して、本人の報告がその後になったとしても、そこは行為そのものを評価します。

──この制度を導入してから安全性は高まりましたか。

従前なら当社の事故区分で「注意事象」に区分されていたものが、にわかにゼロになるというわけではない。でもそうした事象を積み上げることで、ミスが起きた場所、時刻、季節などがわかってくるので、その結果、注意すべき時間帯や注意すべき列車に対策を講じることができる。まだスタートして1年。今は情報を集めている段階です。あきらめずにやり続けます。

──他社と比べると、細かい事故の情報もすべてホームページでオープンにしていますね。

かつて、職場のちょっとしたルール違反を公表しなかったことは確かにありました。でも、乗客の通報により後で発覚し、その結果、大きく報道されるということも経験した。今は少々の速度オーバーであっても開示します。社員を刺激するのが目的ではない。お客様に正直に報告するのが目的です。

──福知山線事故以外で印象に残る出来事はありましたか。