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日本経済にデフレ脱却の道筋が見えた [特別講義]伊藤元重・学習院大学教授

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イラスト:熊野友紀子

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安倍晋三政権は5年目を迎えた。米トランプ政権誕生やポピュリズム旋風に揺れる欧州情勢など世界が激変する中で、2017年度の日本はどうなるのか。学習院大学教授で国際経済学を専門にする伊元重氏に解説してもらおう。

学習院大学教授 伊元重
いとう・もとしげ●1951年生まれ。東京大学名誉教授、ならびに学習院大学国際社会科学部教授。専門は国際経済学。(撮影:田所千代美)

アベノミクスは成功か失敗か

この4年間で大きな成果が二つあります。一つは企業の内部留保が増えたことです。今後、その資金が投資や配当などの株主還元、そして従業員の賃金上昇へ使われるという期待感があります。

もう一つは雇用の需要が増大し、労働市場が引き締まったことです。正社員はもちろんですが、パートや派遣社員の不足が深刻になっています。こちらも賃金上昇につながる動きでしょう。デフレから脱するには賃金アップが欠かせません。

賃金が上がれば消費が増えます。また、物価も上がりやすくなります。それがさらに賃金上昇を呼び込み、また物価が上がる……こういうスパイラルになれば、デフレ脱却の道が見えてきます。賃金上昇による効果はほかにもあります。人件費が上がればその分、企業は労働生産性を高める必要があります。価格やサービスなどのビジネスモデルの見直しやITの活用などが進むでしょう。バブル期が話題になっています。金利が低いのでバブル期のような現象がおきやすいのは事実です。でも当時とは違いますね。銀行から借金をして資産を買っていましたが、いまは企業はむしろおカネを貯め込んでいるわけですから。

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