2017年5月までに閉店する新浦安店。16年度以降の閉鎖店の中では売り場面積は最大となる(撮影:梅谷秀司)

「きちんとしたフォーマットさえ作れば、成長の余地はある。必ずしも店舗を閉める必要はない」。イトーヨーカ堂の大髙善興取締役はそう本音を漏らす。

セブン&アイ・ホールディングス傘下の総合スーパー、ヨーカ堂が苦境にあえいでいる。2017年2月までの既存店売上高は12カ月連続で前年同月割れ。16年度は不良在庫の処分も重なり、2期連続の営業赤字となる見通しだ。

こうした中、同社は止血策として赤字店舗の閉鎖を進めてきた。20年度までに収益改善の見込めない40店を閉鎖する。この方針に沿う形で、16年4月のザ・プライス千住店閉店を皮切りに、次々とリストラが断行されてきた(図表1)。そのスピードはほぼ方針に沿ったものだ。

[図表1]
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だが、今3月の役員人事が社内外に波紋を広げている。16年1月に復帰した亀井淳氏が社長を退き、代わって常務執行役員の三枝富博氏が昇格。このトップ人事に合わせ、ヨークベニマルの会長を務める大髙氏と、創業者・伊藤雅俊氏の二男である伊藤順朗セブン&アイ常務執行役員がヨーカ堂の取締役に就任した。

大髙氏が会長を務めるヨークベニマルは、福島県を中心に食品スーパーを展開する。業績は堅調で、16年度はヨーカ堂のはるか上を行く営業利益140億円(前期比5%増)を見込む。「大髙さんは食品スーパーのプロ。彼の知見を生かして、食品部門を強化したい」(三枝社長)。

一方で大髙氏は冒頭の発言のように店舗リストラには否定的な姿勢を示す。あるセブン&アイ幹部は「大髙氏は以前から『従業員や地域のことを考えると、簡単に店舗を閉めてはいけない』と強く主張していた」と明かす。こうした経緯もあり、「(ヨーカ堂前社長の)亀井氏と大髙氏が店舗リストラをめぐり、激しく対立していた」(別のセブン&アイ関係者)という。

さらに伊藤氏が取締役となったことも今後の店舗閉鎖に影響しそうだ。「グループ全体の大局からヨーカ堂の課題を指摘してもらう」(三枝社長)のが表向きの就任理由である。ただ、言うまでもなくヨーカ堂はグループの祖業。そのリストラに、伊藤氏が一定の牽制機能を果たすことも十分に考えられる。