【今週の眼】佐藤主光 一橋大学教授
さとう・もとひろ●1992年一橋大学経済学部卒業、98年加クィーンズ大学博士号(経済学)取得。2009年から現職。専門は財政学。政府税制調査会委員なども務める。著書に『地方税改革の経済学』『地方財政論入門』、共著に『震災復興 地震災害に強い社会・経済の構築』など。(撮影:梅谷秀司)

2020年度までに国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を黒字化させるという財政再建目標の雲行きが怪しくなってきた。内閣府はアベノミクスが成功する経済再生ケースでも8.3兆円の赤字が残ると試算しているが、財政再建の努力自体が不要だという主張がある。歳出削減や増税など、痛みを伴う改革なしでも財政はおのずと健全化するというのだ。

その一つは成長へ期待を掛ける積極財政論だ。「ドーマー条件」というが、対GDP比の公債残高を安定的に抑えるのに必要なPBは成長率と金利との差に依存する。これは分子(公債残高)が金利水準とPB赤字に応じて増える一方、分母(GDP)は成長率でもって増加することによる。金利と比べて成長率が高ければ、仮にPBが赤字のままでも対GDP比公債残高は発散しない。つまり、借金が経済の身の丈を超えて拡大し続けることはないという意味で財政の持続性は確保される。よって積極財政論者は異次元金融緩和で金利が低いうちに大規模な財政出動で成長率を上げれば、赤字が残っても財政は持続可能と言う。