スタンドプレーが目立った大西社長に、従業員から反発の声が上がった(撮影:今井康一)

まさに異例の退場劇だった。

三越伊勢丹ホールディングス(HD)は3月7日、大西洋社長が同月末に辞任し、後任に杉江俊彦専務執行役員を昇格させる人事を発表した。

大西氏と杉江氏は共に伊勢丹出身。大西氏は6月開催の株主総会まで取締役を続けるが、三越出身の石塚邦雄会長とともに総会で退任する。大西氏は慣例で2期4年務めるはずだった日本百貨店協会の会長も、1年を経ずして辞めることになる。

今回の辞任はかつてないドタバタぶりだった。後任も決まっていない中で辞任報道が先行。実は大西氏の辞任が正式決定した日には、来年度の執行役員人事が発表される予定だった。だが、今回の電撃辞任で、内定していた人事を白紙撤回。杉江体制に合わせ選び直したうえで、今週初めにも新たな役員体制が発表される見通しだ。

[図表1]
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労働組合からの圧力

今回の辞任に関しては、店舗リストラをめぐる旧伊勢丹側と旧三越側の対立が引き金になったという見方も報じられている。だが実際は、大西氏が独断専行により求心力を失ったというシンプルな理由によるものだ。

同社には2015年度こそ訪日外国人客の“爆買い”という神風が吹いたが、16年春以降はその動きが沈静化した。もともと訪日消費を除いたベースでは減収が続いていたため、厳しい実態が一気に表面化。首都圏・地方を問わず店舗は軒並み減収に陥り、特にグループの収益柱である基幹3店(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店)の低迷が打撃となった。

伊勢丹新宿本店の16年4月〜17年2月の売上高は前年同期比で3.1%減。13年に実施した改装による効果が長続きしなかったことに加え、通路拡張で売り場面積が10%減少したことも響いた。

同社は当初、16年度の営業利益計画を前期比12%増の370億円としていた。が、昨年10月に240億円へと下方修正。その後も低迷が続いており、残業代や店舗修繕費など経費を必死に削減しても「240億円の達成すら厳しい」(同社関係者)状況だ。

同社は伊勢丹時代からの伝統で、毎年夏、前年度の業績を基にした決算賞与を支給する。最近では3カ月分近い水準が出ていたが、今年は例年にない業績の低迷により決算賞与は半減する見通しだ。

三越伊勢丹はほかの百貨店に比べて高給なことで知られるものの、本給は安く、賞与で還元する仕組みになっている。伊勢丹出身のある社員は、「この決算賞与は衝撃的。そもそも三越と一体になってからは、賞与は頭打ち。統合による果実をまったく実感できない」と吐露する。

こうした状況に追い打ちをかけたのが、大西氏のスタンドプレーともいえる言動だった。