世界のマーケットに蔓延し続けるサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題。人類がこれまで何度か乗り越えてきた「危機」と今回が異質なのは、この問題がどこまで広がれば終局を迎えるのかが、まったく見えない点だ。

これまで積極的にリスクマネーを供給してきた投資家たちも、新たな「危機」を前になすすべもなく立ち尽くし、リスク回避のアンワインド(巻き戻し)を続けるばかりだ。世界は今、サブプライム問題という亡霊を一日も早く追い払うことだけに躍起になっているが、今こそ必要なのは根源的な問題の核心を分析し、未来に備える教訓を学ぶことだ。

そこで、「情報の非対称性を伴った市場の分析」でノーベル経済学賞を受賞した、コロンビア大学のジョセフ・E・スティグリッツ教授に、サブプライム問題の正体の解剖をお願いした。人類はこの危機を克服することができるのだろうか。

Joseph E.Stiglitz / 1943年生まれ。アマースト大学卒業、MIT大学院を経てケンブリッジ大学留学。71年、27歳でイエール大学教授。スタンフォード大学、オックスフォード大学、プリンストン大学で教鞭を執り、95年クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長。97年世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミスト。2001年コロンビア大学教授、同年ノーベル経済学賞受賞。


──今、世界を震撼させているサブプライム問題。これはなぜ起きたのでしょうか。

根底にある問題は「証券化」と「規制の枠組み」が不十分であったという問題に起因している。

証券化というのは、多数の人にリスクを分散することができるという非常に大きな利点がある。が一方、私自身の研究でも指摘し、経済議論からも指摘されていた証券化に伴う一定の問題が存在していたわけなのだが、証券化に熱心な人たちはそれに耳を貸さなかった。