「ダ・ヴィンチの中身の80%が日本の技術」。ロボット研究者の間で流れる根強いうわさだ。

ダ・ヴィンチは1990年代に米国企業が開発した腹腔(ふくくう)・胸腔(きょうくう)内視鏡手術支援ロボット。1台3億円近いシステムだが、世界中で3000台以上使われている。近年で最も革新的といわれる医療機器のひとつだ。日本でも前立腺がん、腎がんの腫瘍(しゅよう)摘出手術で保険適用される。

本来このような精密ロボットは日本の得意分野。ダ・ヴィンチには大手ばかりでなく中小企業の持つ技術も使われている。日本にこういった技術コーディネートのノウハウがあれば、と嘆く声は多い。

もっと日本発の医療機器を増やせないか。そんな狙いもあって、東京都の委託で、中小企業の技術と医療分野とをつなごうとするのが、2015年に始動した「東京都医工連携HUB機構」だ。都の中小製造企業は8万件(12年)ある。ドラマ「下町ロケット」のように「中小企業は宝の山」と同機構プロジェクトマネジャーの柏野聡彦氏は言う。

機構の母体、日本医工ものづくりコモンズは、09年の設立以来、医学・工学の学界と臨床、産業界の連携による新しい医療の開発を目指した。

だが日常的な診療での「あったらいい」の実現は難しかった。たとえば、車いす利用時のケガ防止や相部屋での入院環境の向上など患者の安全や快適さ、少ない人数で手術が行えるような器具など、現場ニーズは限りがない。それでも大手企業ではロット数百個、年間売上高1億円未満では採算が合わない。

こういった多種多様だが少量の要望に機動的に対応できるのが中小企業だ。