機体のデザインも特徴的なピーチ(写真上)。ANAは“親”としてどう向き合うのか(撮影:尾形文繁)

2月24日夜、LCC(格安航空会社)大手ピーチ・アビエーションの井上慎一CEOの表情は、明らかに曇っていた。

ピーチの筆頭株主であるANAホールディングス(HD)は同日、304億円を投じて出資比率を38.7%から67%へと引き上げ、4月をメドに子会社化すると発表。これを受け急きょ、井上CEOは本社を置く関西国際空港で、ANAHDの片野坂真哉社長との記者会見に臨んだ。

片野坂社長は「ピーチの高い企業価値の果実をより多く取れるようになる」と満足げに語る。井上CEOは「(初便就航から)これまでは孤軍奮闘してきたが、成長フェーズは競争が激しくなり1社では無理。ANAのサポートを得ることで戦略を一層加速する」と述べた。ANAからは運航や整備での支援、航空機や燃油の共同調達といったサポートを受けるという。

ANAの社内プロジェクトから出発したピーチは、2012年3月に日本初のLCCとして運航を開始。そのネーミングや内外装のデザイン、「ウナギ味のナマズごはん」の機内食、段ボールでできたチェックイン機など、従来の航空会社にはないユニークな取り組みで人気を得た。

就航3年目の13年度には黒字化を達成。15年度は営業利益率12.8%という、業界でも屈指の高収益をたたき出し累積損失も一掃した。

[図表1]
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ピーチの株式は11年の設立初期からANAのほか、日本の産業革新機構、香港の投資ファンドであるファーストイースタンアビエーションホールディングスの3社が保有している。今回の子会社化ではANAが両社の持ち分を半分弱買い取る。あくまで3社間の協議であり、ピーチに決定権はなかった。

会見で井上CEOが「もともとは単独でやっていくつもりだったのですが」と語ったように、ピーチの社内には子会社化で従来の独自性が失われるかもしれないという懸念が少なからずある。世界の大手LCCは軒並み独立系で成功した。設立時にANAの持ち分法適用会社にとどめたのも、そうした背景がある。

井上CEOはこの点について、「株主3社からは、独自性は今後もしっかり担保するという力強い約束をもらった」とする。片野坂社長も「人事や運賃、サービスといった部分ではピーチの独自性を尊重する。親会社の意向で幹部を送り込むということは考えていない」と応じた。

ただ会見では、「マイレージ提携、予約システムの(ANAとの)共通化、アライアンスへの加盟、コードシェア(共同運航)は一切やりません!」と井上CEOが宣言したそばで、片野坂社長が「いや、これから考えるかもしれませんし」と牽制する一幕も。トップ2人のぎこちないやりとりは最後まで続いた。