【今週の眼】小峰隆夫 法政大学大学院教授
こみね・たかお●1947年生まれ。東京大学卒。経済企画庁経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長などを経て、2008年から現職。日本経済研究センター理事・研究顧問も務める。著書に『人口負荷社会』『日本経済論の罪と罰』『政権交代の経済学』など。(撮影:尾形文繁)

トランプ米大統領の経済政策で懸念されるのが貿易についての言動だ。主な問題点をまとめてみると、(1)そもそも経常収支、貿易収支は、経済政策上の目標とするようなものではない、(2)ましてや、2国間、品目間の貿易収支については議論の対象にすること自体が間違い、(3)自由貿易を促進するために重ねてきた各国の努力が無になりかねない、(4)米国の対日貿易赤字が大きいのは、日本側に不公正な点があるからではない、などである。

同じような議論は、1980年代から90年代にかけての日米摩擦の過程で繰り返されてきた。しかし、原則論で対抗しても全然話にならず、結局は日本側から何らかの「お土産」を工夫することになった。これは、私のようなエコノミストから見るとまったく悪夢のようなものであった。

2月10日の日米首脳会談の結果、麻生太郎副総理・財務相とペンス副大統領をヘッドとする新たな日米経済対話の場が設けられることになった。再びかつてのような日米交渉が繰り返されるのだろうか。それが繰り返されるとすればまさに悪夢だが、私は今回はそうとう事態は異なると考えている。当時と比べて日米を取り巻く環境がそうとう変化しているからだ。