「出港よ~い」。出港ラッパが鳴り響くと、岸壁と艦艇をつなぐロープが一斉に解かれた。

1987年8月、私が海上自衛隊に入隊し、4カ月半の教育訓練を終えて初めて配属になった艦隊の出港である。人生初の航海だった。

艦艇は、横須賀港を出港し、浦賀水道航路を南下した。海はないでいたが、艦内で私だけが船酔いをしていた。海士が行くべき厠(かわや)にたどり着けず、近くの幹部用に駆け込んだ。とにかく嘔吐が止まらない。

そのうちに幹部用の厠に海士のいることが知られ、先輩が私を連れ出して延々と文句を言ってきた。そんなことより、艦のどこに行こうが揺れは変わらないし、何をしても酔いが止まらない。しかも、私は最下級の2等海士で、容赦なく仕事や雑用が回ってくる。この状態から逃れるには、海に飛び込むしかなかった。

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