いま私の原稿作成は、400字詰め原稿用紙5枚以下の短いコラムは手書き、それより長いものはテープに吹き込み、プロに起こしてもらって、プリントにCDを添えて送っている。

きっかけはある若い編集者に「直筆は結構ですから、フロッピーディスクをください」と言われたことだ。「何だい、それ。日本語で言ってくれ」「記録媒体です」「余計わからない」。詳しく説明してもらった。ワープロが普及し始めた頃だ。本当なら私自身が打てればいいのだろうが、アナログに執着する悪癖があって、いまだに打つことを拒んでいる。そこでテープ起こしはプロに頼んで、1枚いくらで料金を支払うシステムにした。これにもきっかけがある。フロッピーをくれ、という編集者の要望は時代の要求だから無視はできない。こちらもOA化を怠るわけにはいかない。しかしワープロの習得は嫌だ。

そんなときにアメリカ映画『大統領の陰謀』を見た。ニクソン大統領を辞任に追い込んだ民主党事務所への侵入事件で、ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンが記事を書く、ワシントン・ポスト紙の特ダネ物語。40年以上前のことで、日本の記者はメモを取っていた。オフレコ取材で、ポケットに忍ばせたたばこの箱の裏に、チビた鉛筆を何食わぬ顔で走らせていた時代だ。記者のほとんどがパソコンをたたく現在からは隔世の感がある(私のテープ起こしもワープロからパソコン、フロッピーからCDに変わった)。

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