移民の経済学
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Benjamin Powell●米テキサス工科大学教授(経済学)、自由市場研究所所長。米ジョージ・メイソン大学でPh.D.(経済学)取得。米学術誌Review of Austrian Economicsのエディター、米ボストンにあるサフォーク大学、米サンホセ州立大学の各准教授などを歴任。

満載の論点は米国でどこまで議論されたのか

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

日本では、自由貿易が互いの利益を高めるという意見に反対する人は少ない。ならば自由な人の移動はどうか。20世紀初頭まで多くの国で自由だったが、今ではすべての国が規制する。本書は、論争の多い移民政策を米国の専門家が論じたものだ。

まず、頭の体操として全面解禁すると何が生じるか。近年の中国やインドでは、農村から都市への労働移動で高度成長が続いた。同じメカニズムがグローバルで生じ、貧しい国から豊かな国への労働移動で世界のGDPは1.5倍程度膨らむ。5%の労働移動で財と資本の移動の完全自由化に匹敵するという。

GDPがそれほど増えるのなら、全面解禁すべきではないか。貧しい国から非熟練労働が移動することで、豊かな国では非熟練労働の賃金が下落すると同時に、熟練労働の賃金や資本収益性が高まる。貧しい国の労働者を中心に所得が増え世界全体で貧富の差は縮小するが、問題は、受入国においてスキルや資本などを持つ者と持たざる者の間で格差が広がることだ。