愛知県の犬山商工会議所から「歴史に見る激動期の経営者」という話を頼まれた。法人会の協賛で一般市民にも公開したいという。

こういう差し迫ったテーマの場合、私は幕末の経世家である山田方谷の説に従うことにしている。方谷の説とは、「財に苦しむときは財の外に立て」(意訳)ということで、財の渦の中でもがくときは、いったんその渦から脱して岸辺に立ち、問題を鳥の目で見直してみようという論だ。それには問題を見る“目”の確立がいる。私はこの目、問題を考える物差しを近江商人の“三方よし”に置いた。自分(自企業)よし、相手(客)よし、世間(社会)よし、の三者得利の考えだ。

もともと近江商人はインフラの行き届いた東海道筋にマーケットを期待しない。山や谷の多い中山道に行商する。不便な土地にこそニーズが多く埋もれていると考えるからだ。そしてそのニーズの把握(マーケティング)は旅の専門家に依拠する。たとえば俳聖松尾芭蕉などだ。“奥の細道”から戻ってきた芭蕉を迎えて、句心(くごころ)のある商人たちが歓迎の句会を開く。句会の後は宴会になる。