1月最後の週末。伊勢丹新宿本店には多くの中国人が集まるが、かつての勢いはない(撮影:今井康一)

「残業は絶対にしないように──」。三越伊勢丹ホールディングスの社内では、最近こんな指示が飛び交っている。これは単なる働き方改革の一環ではない。人件費の抑制を目的とした大号令がかかっているのだ。

薄れた爆買いの恩恵

百貨店首位の三越伊勢丹HDが苦境にあえいでいる。1月下旬に同社が発表した2016年4〜12月期の営業利益は前年同期比36%減となる196億円。競合のエイチ・ツー・オー リテイリング(16年4〜12月期で7.1%減)、高島屋(16年3〜11月期で3.4%減)、J. フロント リテイリング(同13.3%減)と比較しても突出した減益幅だ。

[図表1]
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百貨店業界は15年度に訪日外国人客の「爆買い」の恩恵を受けたが、16年春以降に訪日客の高額消費が落ち込んだ影響を受けている。だが、三越伊勢丹の問題の本質はそこにはない。訪日消費を除いたベースで、伊勢丹新宿本店をはじめとした旗艦店の売り上げが減り続けているのだ。15年は爆買いの神風が吹いてそのことが表面化しなかったに過ぎない。

百貨店は店舗運営費や人件費がかさむことから、小売業の中でも群を抜く高コスト体質。わずか2〜3%の売り上げ減が大幅減益に直結する。三越伊勢丹HDの場合、ほとんどの店が軒並み減収となっている(図表2)。このままでは16年度の会社計画である営業利益240億円に届かない可能性もある。

[図表2]
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特に伊勢丹新宿本店は、日本一の売上高を誇る「ザ・百貨店」。先端ファッションを追求した品ぞろえで顧客を獲得し、高収益店としてグループ内の赤字店を支えてきた。伊勢丹新宿本店が落ち込めば、グループ全体への影響は計り知れない。