非伝統的金融政策 -- 政策当事者としての視点
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みやお・りゅうぞう●東京大学大学院経済学研究科教授、神戸大学名誉教授。1964年生まれ。神戸大学経済学部卒業。米ハーバード大学にてPh.D.(経済学)を取得。神戸大学経済経営研究所助教授、同教授、同所長、日本銀行政策委員会審議委員(2010〜15年)を経て現職。

構造改革の努力は十分になされているか

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

かつて金融政策といえば、短期金利を操作し、長期金利や株価、為替レートに影響を与えて、マクロ経済や物価の安定を図る伝統的政策が主流だった。今では財政赤字の2倍もの長期国債を購入し、大量の上場投資信託(ETF)を買い付け、さらにマイナス金利を適用し、長期金利をゼロ%に誘導する非伝統的な政策が取られる。

ただ、伝統的政策といえども200年に満たない中央銀行の歴史の中で、この20年ほど主流だったに過ぎない。現状の政策が長引けば、非伝統的政策が新たな伝統と呼ばれる日が訪れる可能性がある。本書は、日本銀行が非伝統的政策を相次いで導入した2010〜15年に審議委員を務めた経済学者が、非伝統的政策について理論面を含めわかりやすく論じた好著だ。

量的緩和の効果に疑問を持つ人も少なくないが、本書は長期国債の大量購入を中心とする政策は、理論的にも実証的にも効果があったと論じる。評者もそれを認めるが、為替レートや株価などにばかり影響が表れ、実物経済や物価への効果は十分だったといえるか心もとない。将来、政策の手仕舞いの際に発生し得る大きなコストに見合うだけの成果といえるのだろうか。