【今週の眼】佐藤主光 一橋大学教授
さとう・もとひろ●1992年一橋大学経済学部卒業、98年加クィーンズ大学博士号(経済学)取得。2009年から現職。専門は財政学。政府税制調査会委員なども務める。著書に『地方税改革の経済学』『地方財政論入門』、共著に『震災復興 地震災害に強い社会・経済の構築』など。(撮影:梅谷秀司)

トランプ米新政権が導入を検討する「国境税」が話題になっている。この案はトランプ政権が唐突に打ち出したわけではない。同様のアイデアは、昨年6月に公表された議会共和党の抜本的税制改革プランの中にもある。日本では国境税などと訳されているが、共和党案は国境調整を伴う「仕向け地主義キャッシュフロー税」である。ブッシュ政権時の2005年に税制改革諮問委員会が提言した「成長および投資促進税制案」の一つでもあり、賛同する経済学者もいる。その特徴は次の3点に集約される。

まず、人件費や原材料費と同じく、企業の投資支出は、支出された年に課税ベースから即時控除、すなわち非課税となる。現行の法人税の下では設備投資は後年度、減価償却費として複数年かけて控除される。減価償却費の総額はおおむね投資額に等しいが、その現在価値は低くなる。将来の1億円と現在の1億円では価値が異なるからだ。他方、即時控除であれば、投資支出の全額が経費として認められ、このことは投資を喚起する方向に働く。さらに、課税ベースの計算は簡単なため、中小企業にとって簡素な課税にもなる。

第二に、即時控除でコストが考慮されているので、借り入れで資金調達したときの利払い費控除は廃止される。現行の法人税は配当を課税、利払い費を控除と扱い、借り入れによる資金調達を有利にしてきた。その結果、企業の負債が増加して、リーマンショックのような危機の際、企業倒産を助長したとの批判がある。キャッシュフロー税であれば企業の資金調達の選択を歪めない。