[ポイント1]
「土のソムリエ」の異名を持つ左官・挾土秀平は岐阜・高山で左官業・挾土組の長男に生まれた。合板とクロスが全盛の現代、左官は今や絶滅に瀕している

[ポイント2]
「これからは空間的プレゼンテーションが必要」と語る挾土だが、セメント仕事ばかりの家業・挾土組とは方向性がずれ、「職人社 秀平組」を立ち上げる

[ポイント3]
「俺の壁は詩であり小説」というその腕が東京で認められる。バーやホテルの空間から果てはNHK「真田丸」の題字まで、活躍の場は壁に収まり切らない

 

 

白い壁で囲まれた部屋に深緑色のひじ掛けいすが8脚、壁面には黒光りする暖炉、その上には見事なマントルピースがある。まるで貴族の館の応接室だ。

「全部ぴんぴんの職人仕事で仕上げたものばかりよ。これは砂壁だし、床は寄せ木細工、カーテンレールは真ちゅうのろう付け、建具は春慶塗(しゅんけいぬ)り、ここは漆喰(しっくい)の黒磨きだ」

建物の主である挾土秀平(はさど・しゅうへい)(54)が指差しながら、誇らしげに説明する。

「職人社 秀平組」の代表として職人十数人を率いる。記事に出てくる「歓待の西洋室」とは別の場所にある秀平組の事務所で、塗り壁の見本を前に撮影(撮影:尾形文繁)

飛騨(岐阜県)の高山市郊外、雑木林の中に開かれた広さ2000坪強の土地に立つ、築100年の洋館の一室。もともとは市内中心部にあり、老朽化して廃屋同然になっていたのを譲り受け移築したものだ。「歓待の西洋室」と名付け、以来14年以上かけて修復してきた。

挾土は天然の土と素材を用いた壁作りで知られ、「土のソムリエ」「カリスマ左官職人」といった異名を持つ。都心の有名ホテルのロビーやバーの壁、テレビ番組のセット、はたまた舞台美術まで手掛ける異色の左官だ。昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」の題字を書いたことで一躍メジャーになった。