有料会員限定

規制緩和による住宅建設ラッシュの弊害 埼玉県川越市、従来の住民と新住民の軋轢も

✎ 1〜 ✎ 10 ✎ 11 ✎ 12 ✎ 最新
拡大
縮小

古い蔵造りの街並みが残ることから「小江戸」と称される埼玉県川越市。JR川越線、東武東上線、西武新宿線の3路線が通る利便性から、都心部のベッドタウンとしての顔も持つ。東武東上線で池袋駅まで約30分だ。

この川越市で近年、規制緩和による市街化調整区域(以下、調整区域)の宅地開発ラッシュが起き、多くの農地が住宅に変貌した。

調整区域は本来、開発を抑制するエリアだ。しかし、2000年の都市計画法改正で、一定の条件を満たせば建築物を建てられるようになった。川越市も06年5月に「開発許可等の基準に関する条例」を施行し、規制緩和に踏み切った。

[図表1]
拡大する
(注)棒グラフの左側は規制緩和に基づく当初想定の新規開発面積(市試算)、右側は開発許可面積 (出所)川越市「立地適正化計画」(原案)や同市議会議事録などを基に本誌作成

特集「持ち家が危ない」の他の記事を読む

規制緩和に基づく開発許可面積が川越市内で最大だったのは、名細(なぐわし)地区。東武東上線の霞ヶ関、鶴ヶ島両駅周辺に位置する。両駅から東へ進むと、農地に入り交じって、大きいものでは10戸以上が一つにまとまった戸建て住宅の区画に、幾度となく出くわす。

農地に戸建て住宅群が浮かんでいるよう(名細地区)

こうした戸建て住宅は区画面積が200平方メートル以上と広く、2台分の駐車場を備えたものが多い。市街化区域より地価が低いという利点もあり、駅からは遠いが「広くて安い」住宅が大量に供給された。多くの物件は、自動車移動の生活を前提とする30~40代の子育て世代を中心に購入が進んだ。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
持ち家が危ない
全国270駅マンション価格
東京郊外都市、勝者・立川vs.敗者・八王子
3大都市圏の人口1万人以上の市区町村
エリアの色分け進む「立地適正化計画」の衝撃
維持修繕コスト高、経年後は中古市場で敬遠も
割安で見た目がおしゃれでも購入前にチェック
欠陥を見つけたときの対処法のポイントは?
いつか必ずくる解体、老朽化にどう対処する?
▶▶Part2 マンションの悩み/管理組合
早めの売却が有利? 実家の空き家をどうする
埼玉県川越市、従来の住民と新住民の軋轢も
住宅ローンの返済をやっと終えたのに...
▶▶Part1 戸建ての惨状/開発団地の今
「負動産」問題2/保育園不足に修繕積立金…
「負動産」問題1/東京都心でも広がる空き家
75歳以上がこれから急増するのは東京圏
マイホームが「負動産」になる 持ち家が危ない
空き家、高齢化、みんなが住まいで悩んでいる
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内