本田宗一郎社長と藤沢武夫副社長は創立25周年を機に、第一線から退く意図を明らかにした。本田社長66歳、藤沢副社長62歳だから、日本の経営者としてはまだそれほど老齢というわけではない。しかも創業者社長なのでまだまだ居すわったとしても世間は納得する。それだけに、その引退ぶりはあざやかと評してよい。

当の本田社長は、「もう若い者の時代だよ」と淡々とした口ぶり。引退後は何をするのか、との質問には、「これまでと格別変わるわけでもなし、何をするか全然考えていないよ」と体をかわしていた。

本田技研工業社長 本田宗一郎

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──第一線を退くという気持ちを最初にお持ちになったのはいつごろでどういう契機からですか。

どういう契機もないね。死ぬまで社長のイスにしがみついているというようなことは初めから考えていないから、いつかはやめなければならない。どうせやめるなら、なるべく早く交替すべきだというだけですよ。

──創業者社長が66歳で、まだたいへん元気なのに退任するというのは、世間の常識からいえば非常に早いという感じがしますが……。

他人が見れば元気に見えるかもしれないが、ぼくの生涯を通じたら最近、ずいぶん力が落ちているね。それに、後継者たちがどんどん育ってきている。むろん、藤沢副社長と早くから相談して、後継者が育つようにしむけてきた結果なのだが……。