電通が岐路に立たされている。高橋まつりさんの自殺が労災認定を受けたことをきっかけに、労働時間の過少申告や残業代の不払いなど、さまざまな問題が噴出。石井直社長が引責辞任するまでに発展した。

長時間労働防止の対策として電通は、22時以降はオフィスの電気を一斉に消すという方針を打ち出し、早帰りの体制作りに乗り出している。

だが、この評判がすこぶる悪い。ネット上では、「形だけよくしても駄目。仕事の量が減らないのに、早く帰れるわけがない。朝早くから仕事を始めるか、どこか別な所で仕事をするしかない」と、実効性を疑問視する声が上がっている。

労働時間を減らすには、まず仕事量を減らすことだ。「明日でもいい仕事は、今日はやらない」といった割り切りも必要になるだろう。電通にその気持ちが持てるか。

もっとも、長時間労働は電通だけの問題ではない。日本企業の多くが、頭を抱えている課題のはずだ。

夕方、企業の人に電話をすると、退社している際は決まって、「所用があって失礼させていただきました」という返答が来る。

知りたいのは、所用があったかどうかではなく、いるかどうかだけだ。この返答の裏には、早帰りへの罪悪感があるように思える。この風土が変わらないかぎり、仕事量はなかなか減らせないだろう。

仕事の量ではなく、質を下げる選択肢もある。ただ、電通をはじめ大企業は、徹底した仕事ぶりで今日の地位を築いてきたという自負がある。ライバルが多い中、質を落とせば、お株を奪われかねないとの危機感もあろう。

残る解決策は、人を増やすことだが、一人前になるまでには時間がかかるうえ、人件費の高騰も大きな足かせになる。そもそも、有効求人倍率は1.41倍と25年ぶりの高水準にある(2016年11月時点)。人材を採用するのもそう簡単ではない。

政府の施策も追い打ち