有料会員限定

近代国家がなぜか固執する「領土という病」 内向きになるとき、国家は領土にしがみつく

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 最新
拡大
縮小

日本は海に囲まれた島国であり、普段、国境(国境線)を意識することはあまりない。陸地続きの国境線がないため、フェンスや壁も具体的にイメージしにくい。

しかし、国境は私たちの国の空間がどこからどこまでなのかを明示するものとして確かに存在する。

そもそも国境の概念はいつ成立したのか。軍事的・政治的支配が及ぶ領土という概念は古くからあったが、国と国の間を排他的に明確に仕切るという考え方が世界のルールになったのは、最初の近代的国家間条約といわれる1648年のウエストファリア条約からとされる。

この条約を契機として、区切られた空間の人や物の管理を一元的な権力の下に置くことが確認された。この物理的空間が領土であり、よそとの境界が国境となった。

国家主権の平等、国内問題への不干渉といったウエストファリア体制の基本的枠組みは、やがてヨーロッパ全体に広がり、第2次世界大戦後は全世界へと拡大・深化していく。国家の主権を尊重するという考え方は、境界をどこに引くかというプロセスと一体であった。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
ビジネスマンのための近現代史
共産主義はなぜ全世界に広がらなかったのか
「日本は特別」と考える理由は天皇の存在
亡国のポピュリズム、今よみがえる戦前の影
ワイマール共和国からナチズムへ転落のなぜ
反共からポピュリズムへ、支持集める国民戦線
内向きになるとき、国家は領土にしがみつく
大国に挟まれた韓国のナショナリズムと世界観
共産党一党独裁下の大衆扇動が招いた悲劇
中国の権力闘争は二千年来の歴史からの必然
米国/反権威としてのトランプ、米国の大衆性
勢いづくポピュリズムの対立軸を読み解く
▶▶Part2 近現代史が語る時代への教訓
国家、保護主義、ナショナリズムがわかる
産業革命、市民革命、国民国家、民法典が大事
ビジネスマンのための「なるほど歴史講座」
2世紀ぶりに世界の中心は欧米からアジアへ
▶▶Part1「いま」がわかる歴史の読み方
ナショナリズム、ポピュリズム、保護主義
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内