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作家・佐藤優が説く「近代国家という仕掛け」 ▶▶Part1「いま」がわかる歴史の読み方

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トランプ新大統領の出現で民族と国家のエゴイズムを含んだ新帝国主義が広がるか(EPA=時事)

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国際秩序が大きく変化しようとしている。東西冷戦の終結とソ連崩壊後に進んできたグローバル化に対して、大きな反動が起きている。国家の自己主張が強まり、自国の国益を正面に掲げる帝国主義的傾向が強まっている。

しかし、19世紀末から20世紀の古典的帝国主義のように、植民地を求めることもなければ、帝国主義国間の全面戦争が起きることもない。それゆえ、現在進行中の状況を「新帝国主義」と呼んでおく。米国大統領選挙で「米国第一」を唱えたドナルド・トランプの勝利や英国のEU(欧州連合)からの離脱、欧州で影響力を拡大しつつある極右政党や排外主義者の動きも、新帝国主義現象の反映だ。ここでカギを握るのが民族と国家だ。この点について、世界史的視野で考察してみたい。

人間は群れをつくる動物だ。人間がいれば必ず社会ができる。しかし、社会があれば必ず国家があるわけではない。人類史は狩猟・採集時代、農耕時代、産業時代と発展した。狩猟・採集時代には、国家を必要とするほど社会の規模が大きくなかったため、人間の社会はあったが、国家はなかった。農耕時代には古代メソポタミアやエジプト、中国の秦のような巨大帝国は存在したが、自給自足の農村社会が国家と無関係に存在していた場合もある。

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