「野党」論: 何のためにあるのか (ちくま新書)
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よしだ・とおる●北海道大学法学研究科・公共政策大学院教授、フランス国立社会科学高等研究院日仏財団リサーチアソシエート。専攻は比較政治、欧州政治。1975年生まれ。慶応義塾大学法学部卒業、東京大学総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。

政権交代型野党から対決型野党へ移行途上

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

参議院選挙や東京都知事選挙の結果を見て、野党を不要と考える人も多いだろう。しかし、野党不在だと、少数意見が軽視され、多数の専制がまかり通るおそれはないのか。

本書は、欧州の政治制度に精通する気鋭の政治学者が、戦後の日本や先進各国の状況を検討し、民主主義を上手く機能させるため、野党をいかに使いこなすかを論じたものだ。

野党の役割は、権力の座にある与党への異議申し立て、争点の可視化、与党が汲み上げきれなかった民意の残余を代表することの三つという。意外なのは野党の役割を担うのが必ずしも政党とは限らない点だ。米国では司法が政権に異議申し立てを行い、野党性を持つ。連邦制を取るドイツでは、州政府の代表で構成される上院が野党性を持つ。多党制のスイスでは、主要4政党に閣僚を平等に割り当て制度の中に野党性が溶け込む。

55年体制の日本では、選挙区全てに候補者を立てず政権交代を自らも想定していなかった社会党が、巨大な自民党に対峙した。自民党が多様性を持ち、派閥間で一種の疑似政権交代が行われていたから、与党の政権運営に緊張感を与える「抵抗型野党」で十分だった。小選挙区制の下で2大政党化への圧力が続く中、ポスト55年体制では「政権交代型野党」の時代となる。