びくびくしてもしょうがない

(撮影:尾形文繁)

取材日程のダブルブッキングをしてしまった──。

週刊朝日編集部の山本朋史(ともふみ)さん(64)にとって記者生活で初めての「痛恨のミス」だった。

3年前、山本さんが強い不安を感じたのは、その少し前から記憶力が落ち、物忘れが激しくなっていたからだ。直前に聞いた人の名前も出てこなくなっていた。

「加齢のせいと思い込んできたけれど、もはや認知症かもしれない」

2013年12月に東京医科歯科大学の「もの忘れ外来」を受診。翌月、朝田隆医師から告げられた診断結果は、「MCI(軽度認知障害)」だった。

「放っておくと4年で約半数が認知症になると聞いて、動転した」。山本さんは当時の心境を振り返る。

MCIは認知症予備軍ともいわれる。疾患ではなく、認知機能のうち記憶力が低下している状態だ。アルツハイマー型認知症と違うのは、日常生活に大きな支障はなく、記憶力以外の認知機能は低下しない点だ。

診断の手掛かりにと、脳のMRI(磁気共鳴断層撮影)や脳血流スペクトといった精密検査も受けた。認知症の診断の目安になる、脳の海馬の萎縮は年齢相応だったが、脳の一部に血流の悪い部分が見られた。