認知症では早期診断、早期治療がカギになる。ところが実際には、認知症の症状がかなり進んでから受診する人も少なくない。

その理由について、国立長寿医療研究センターもの忘れセンター長の櫻井孝氏は「背景には認知症への偏見がある。親の認知症を隠したい気持ちはわかるが、平均寿命が80歳を超えた今、認知症はどの家庭にもあるというぐらいの覚悟が必要」と語る。

櫻井 孝・国立長寿医療研究センターもの忘れセンター長。神戸大医卒、同大学院修了。専門は老年医学、認知症など。

櫻井氏の診察を受ける人の大半は、家族の勧めやかかりつけ医の紹介で来院する。受診のきっかけで最も多いのは「同じことを何回も話す」「物を置き忘れる」といった記憶障害だ。

大事なのは老化による物忘れと認知症は違うということ。老化の場合、昨日の夕食のメニューは思い出せなくても、たとえば外食したことは覚えている。しかし認知症の人は外食したこと自体を忘れてしまう。老化は忘れている自覚があるのに対して、進行した認知症では自覚がない。

受診のタイミングは、親を見ていて今までとの違いに気づいたときだ。たとえば、料理の段取りがうまくできなくなった、いつも片付いていた部屋が散らかっている、飲み忘れた薬がたまっている、スーパーの駐車場で迷う、ATM(現金自動出入機)を使えなくなった、といった変化が目安になる。