よしかわ・ひろし●1951年生まれ。東京大学卒業後、イェール大学大学院Ph.D。ニューヨーク州立大学助教授、東大大学院教授など経て、今春から現職。近著に『人口と日本経済』(中公新書)。(撮影:梅谷秀司)

今の経済学は現実と大きく乖離してしまった。経済学に携わってきた者として、大変に残念。しかもその乖離はますます広がっているように思える。

以前であれば、マクロ経済学とはケインズ経済学のことであり、ミクロ経済学とは新古典派が唱えた均衡理論(価格は需要と供給が一致するように市場で調整されるとする理論)を指していた。

資本主義経済は時として不況に陥る。そのときは供給よりも需要が不足しているから、裁量的な財政・金融政策によって対処する。ケインズ経済学の出番だ。そして完全雇用が実現したら、効率的な資源配分が重要になる。そこでは新古典派の均衡理論を使う。つまり経済学は、マクロとミクロの二刀流だったのだ。

ところが1970年代以降、特に私の専門とするマクロ経済学が大きく変わった。一言でいえば、“マクロのミクロ化”だ。ケインズ経済学は完全に忘れ去られた。今の主流派経済学は「国全体のことなど考える必要はない。あるのはミクロの問題だけだ」と声高に主張しているように見える。