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行動経済学は伝統的理論への不信を覆せるか 書評:デフレ脱却には大型財政出動が不可避?

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行動経済学の逆襲
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Richard H.Thaler●米シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス教授。全米経済研究所研究員。1945年生まれ。行動科学と経済学を専門とし行動経済学のパイオニア。正しい行動を促す概念として提唱した“ナッジ”は一世を風靡し、多くの政府の政策に取り入れられる。

確立までの舞台裏をドキュメント風に記述

評者 東洋英和女学院大学客員教授 中岡 望

現在、経済学に対する人々の信頼感は喪失されているのではないだろうか。リーマンショックに始まる世界大不況はすでに8年経過しているのに、経済学者は危機に対する明確な処方箋どころか要因分析すら提示していない。経済予測は学者によってバラバラだ。経済学は科学的根拠に基づくハードサイエンスとして認めていいのだろうか。

行動経済学は伝統的な経済学に基本的な疑問を提起する。伝統的な経済学は「超合理性モデル」に依拠している。人々は合理的であり、完全予見と完全情報で市場は導かれ、貨幣錯覚は存在せず、市場の均衡は速やかに実現するというのが古典派的な経済学の考え方である。

それには科学的根拠はなく、「合理性の公理」を前提に構築された論理にすぎない。しかし、人間は合理的な存在ではなく、誤りを犯す存在であると、行動経済学は異を唱える。行動経済学は心理学を援用しながら、「人間がどのように行動するかを正確に記述する経済モデルを構築」することを目指している。著者は「行動経済学の真の目的は、標準的な合理的モデルと矛盾する行動に光を当てることである」と主張する。

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