8月15日の戦没者追悼式に出席された天皇陛下。去年に続き「深い反省」という言葉を盛り込まれた(Photoshot/時事通信フォト)

衆参両院で改憲勢力が3分の2以上を占める政治状況で、安倍晋三政権は憲法改正の具体的な作業に着手することが予想されている。他方、天皇が生前退位の希望を国民に直接語りかけたことで、天皇制の改革が政治日程に上ろうとしている。戦後70年余りにして、日本の政体が大きな岐路に立っている。

ドイツ生まれの社会学者、ラルフ・ダーレンドルフは『ヨーロッパ革命の考察』の中で、資源配分をめぐる通常の政治(normal politics)と政治体制自体のあり方をめぐって争う憲法政治(constitutional politics)を区別している。民主化が急激に進む時期には憲法政治が活性化するが、いったん憲法体制が確立すれば通常の政治に移行するというのが彼のモデルである。日本の場合で言えば、1960年安保の後、自民党が改憲を事実上断念してから通常の政治が全面化し、自民党は統治能力を発揮した。

しかし自主憲法制定という執拗低音は消えていなかった。経済的な行き詰まりは先進国共通の悩みで、西欧では体制外のポピュリストが憲法政治を活性化させて政権を揺さぶっている。これに対して日本では、安倍政権自体が経済に対する国民の不安をはぐらかすため憲法政治を前面に出そうとしている。ただ、天皇陛下の問題提起によって、憲法政治の展開は安倍首相の思うとおりには進まない様相である。