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『金融政策の「誤解」』マイナス金利の限界 書評:ヒラリーの夫にも注目

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金融政策の「誤解」 ―― “壮大な実験"の成果と限界
金融政策の「誤解」 ―― “壮大な実験"の成果と限界(慶應義塾大学出版会/304ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
はやかわ・ひでお●富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー。1954年生まれ。東京大学経済学部卒業、日本銀行入行。米プリンストン大学大学院留学(MA取得)。調査統計局長、名古屋支店長、大阪支店長、理事などを経て、2013年から現職。

時宜を得た 量的質的緩和の分析書

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

日本銀行は9月下旬の政策決定会合で、2013年4月に開始した量的質的緩和(QQE)の総括的な検証を行う。2年で2%のインフレ目標を掲げたが、黒田東彦総裁の5年の任期中の目標達成も危ぶまれているのが実状だろう。

こうした中、時宜を得たQQEの分析書が現れた。著者は、日銀きっての理論家として知られ、チーフエコノミストに当たる調査統計局長を長く務めた。日銀の手の内を知り尽くし、QQEの開始直前に退職した。まずQQEは実験的性格が強く、当の黒田総裁も成功の確信があった訳ではないと推察する。さらに、成功してもそれは短期決戦のケースだけで、大量の長期国債を購入するため、長期戦にもつれ込むと財務内容の悪化で日銀自身も窮地に陥る。いくらでも国債を買えると黒田総裁は言うが、国際通貨基金も国債購入は数年内に限界が訪れると警告する。1月に副作用の大きいマイナス金利政策を導入せざるを得なかったのも、国債購入が限界に近づいているからにほかならない。評者も同じ認識だ。

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