有料会員限定

退職債務に企業が悲鳴 マイナス金利で膨らむ

拡大
縮小

金利低下で企業の「退職給付会計」負担が急膨張。制度は持続可能なのか。

債券利回りマイナスの状態が続くと、年金制度そのものが維持できなくなるかもしれない(アフロ)

「今の金利状況だと、年金費用が大幅に膨らんでしまう」

退職給付会計の計算を受託している金融機関の元へ、今年2~3月、顧客企業からの悲鳴が相次いだ。1月に、日本銀行がマイナス金利政策の導入を発表し、債券利回りが急低下。このことが企業の年金費用を増加させたからだ。

その仕組みはこうだ。

企業は退職給付(退職金や年金)の将来の支払額を把握し、それに応じた年金資産を用意しなければならない。確定給付(将来支払う額が定められている)制度を採用している企業は、将来の支払額を「割引率」を用いて現在価値に計算し直し、「退職給付債務」を算定する。つまり割引率とは、現在から見れば、支払期日までの仮に想定した運用利回りともいえる。

したがって、この想定運用利回り=割引率が低下すれば、通常、積み立て不足が生じるので、一定の期間にわたって不足分を費用計上することになっている。

この割引率は安全性の高い債券の利回りを基に決めるが、日本国債を採用している企業が多い。1月下旬までプラス0.1%前後だった10年国債利回りは、3月下旬にマイナス0.1%前後と符号が逆転するほど低下した。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内