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『貨幣の「新」世界史』『三菱自動車の闇』 『野戦病院でヒトラーに何があったのか』など

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貨幣の「新」世界史──ハンムラビ法典からビットコインまで (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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Kabir Sehgal●米電子決済サービス企業ファースト・データ企業戦略担当。米JPモルガンの元新興市場部門バイスプレジデント。米ダートマス大学、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス卒業。米海軍予備役、外交問題評議会の任期付き会員も務める。

共有するため稼ぐことで人類の繁栄を促す

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

脳神経科学によると、薬物でハイになった人と金儲けに没頭する人の脳スキャン画像は見分けられないという。新古典派経済学は、貨幣は実体経済にとってのベールと説いたが、おカネは脳を刺激し、現実に我々の行動に影響をもたらす。貨幣には合理的行動から逸脱させる魔力が宿っているということか。

本書は、リーマンショックをきっかけに、私たちを翻弄する貨幣について研究を始めた実務家が、生物学、心理学、脳神経科学、人類学、哲学、芸術などさまざまな視点から論じたユニークな人類史で大変楽しめる。

経済学では物々交換の不便さ解消に貨幣の起源を求めるが、著者は生物学的視点から起源を探る。バクテリアを始めあらゆる生物は、生存のためのエネルギー確保において他者と共生関係を築く。抽象概念を理解する能力を獲得した人類が、本能として持つ共生関係の延長として貨幣を創造したと推測する。

硬貨の発明は紀元前7世紀頃の小アジアに遡るが、その数千年前から人類は穀物を借り入れ収穫物で返済していた。物々交換ではなく、負債がおカネの起源だった可能性を論じる。市場経済への移行過程で、返済手段として賦役や奴隷制など負債のダークサイドが定着していく。

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