20XX年の東京。そこにかつてのタクシーの姿はもうない──。街中を走るのは「トヨタ・タクシー」や「グーグル・タクシー」が運営する無人タクシー。自家用車にも「ライドシェア」が普及し、見知らぬ人同士が乗り合っている。

自動運転機能を搭載した無人タクシーは、行きたい場所にピンポイントでたどり着ける。便利さが受け、特に都心では、地下鉄やバスを使用する人はかつてより極端に減った。しかも原則無料だ。代わりに車内には広告がつねに流れる。広告音を消して静かに移動したい場合にかぎり有料となる。

かつてのタクシー会社はというと、要人や子供の送迎、観光客など限られたニーズに対して、乗務員が人間ならではのおもてなしで応対する──。

これは決してSF物語ではない。すでに自動運転車は技術的に実現味を帯びてきている。こうした来るべき将来に向け、危機感を隠さない人物がいる。タクシー最大手、日本交通の川鍋一朗会長である。

「拾う」タクシーから「選ばれる」タクシーへ

日本交通会長 川鍋一朗 (撮影:今井康一)

川鍋といえば外資系コンサルティング会社マッキンゼーを経て、祖父が創業した日本交通の社長に34歳で就任した、人呼んで「タクシー王子」。バブル期の過剰投資で同社が抱えた1900億円もの負債を、グループ会社の整理・売却を進め返済した経緯は、老舗企業の再建ストーリーとして語り草となっている。