幻の同盟【上巻】―冷戦初期アメリカの中東政策―
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おのざわ・とおる●京都大学大学院文学研究科准教授(現代史学専修)。1968年生まれ。京大文学部史学科卒業。京大大学院文学研究科博士後期課程退学。岩手大学人文社会科学部講師、米ジョージタウン大学客員研究員(文部科学省在外研究員)などを経る。

広い枠組みからとらえた米国中東政策分析の労作

評者 東京外国語大学大学院教授 渡邊啓貴

イラク戦争や「アラブの春」以後の中東地域の混乱の中で、今やこの地域ではロシアの影響力が米国を凌いでいるといわれる。「グレート・ゲーム」と称され、19世紀以来中東が地政学的に要衝の地域であることは今でも変わりはない。

しかしあらためて考えてみると、戦後多くの植民地が独立した後、この地域の本当の支配者はどの国だったのであろうか。

一般にはそれまで最も大きな影響力をもっていた英国が1956年のスエズ危機の結果、「スエズ以東」からの撤退を宣言した後、中東地域は米国の勢力圏となっていったといわれる。そこで冷戦時代のパレスチナ紛争への米国の積極的なコミットを想起することは容易であろう。