日本史は日本だけで成立した歴史ではない。故・安藤達朗氏は、〈日本史と世界史との間に同時代的な連関がある〉と指摘、〈同一の時代には、相互に類似の現象が生じる〉という。だからこそ、世界との関係を念頭に置きながら日本史を読み解くべき、ということだ。

日本史は歴史の「実験室」。そう呼ばれることがあると、安藤氏は紹介する。ほぼ同一民族の国家で島国、強大な帝国による直接支配といった異民族支配も受けたことがない。他国の歴史と比べても、いわば純粋培養的な性格がなくもない。とはいえ、〈一種の歴史の純粋培養という性格をもつとしても、日本史の展開が世界から隔絶されて行われたことを意味するのではない〉のは確かだ。

日本と世界の歴史の類似性に着目して、戦後に最も注目されたのは、梅棹忠夫の『文明の生態史観』だろう。梅棹は生態学の立場から「歴史は人間と土地との相互作用の進行のあとだ」と考え、世界史のモデルを作った。

概略をいえば、米国(新世界)を除く旧世界において、日本と西欧文明を「第1地域」と「第2地域」に分けた。そして、第2地域では古代文明が発生したが、乾燥地帯の遊牧民による破壊と征服を受け、近世に入って強大な帝国が成立する。一方、第1地域は野蛮の民として出発しながらも、第2地域から文明を導入し、封建制、絶対主義から高度の近代文明を持つ地域になると説明した。