「農機の完全自動運転にチャレンジ」 インタビュー/クボタ社長 北尾裕一

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クボタの北尾裕一社長は「2020年の売上高の落ち込みは、他業界と比べると小さかった」と振り返る(撮影:梅谷秀司)

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各国で排出規制が強まる中、日本でも菅義偉首相が2050年のカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出ゼロ)目標を掲げた。エンジンを使っているのは車だけではない。農業機械業界もその一つだ。
さらに足元では、農業従事者の高齢化と減少が進んでいる。自動車業界と同じく、農業機械業界も電動化と自動化を迫られている。
2020年就任の新トップに聞く連続インタビュー。2回目は2020年1月に就任した国内最大手・クボタの北尾裕一社長に聞いた。

コロナで予想外の特需

――社長就任直後に世界中でコロナ感染が広がりました。

2月後半から大変なことになった。中国、北米、ヨーロッパと次々に各地の工場が操業休止を余儀なくされ、生産にブレーキがかかった。特にヨーロッパではロックダウンの影響も大きく、農業機械、建設機械とも売り上げが大きく落ち込んだ。

ただ、農機で言うと、当社のシェアが高いASEANはコロナ影響が限定的だった。北米も戻りが早く、足元の現地販売は前年を大きく上回っている。前半の落ち込みが響いて2020年度の全社売上高は前年度より10%程度減る見通しだが、それでも他の業界と比べればマイナス幅は小さい。(世の中で必要とされる)エッセンシャルなビジネスを手がけているからこそだと思う。

2020年は当社の130周年だった。「技術的に役立っているだけではなく、社会の役に立って初めて、事業としてやっていける」というのが創業者の教え。今回のコロナ禍を通じて、その言葉の意味を再認識させられた。

――北米事業の最新の状況を教えてください。

5月以降、現地での売上高は前年対比で20~30%も伸びており、われわれ自身も非常に驚いている。農機はコロナによる巣ごもり特需の側面もある。当社のトラクターは郊外の大きな家に住む人たちのガーデニングにも使用されているので、テレワークで在宅時間が長くなったり、都心から郊外の家に引っ越す人たちが増えたりしていることが、需要の増加につながっている。

また、北米では住宅着工件数が回復し、小型建機も足元の引き合いが非常に強い。4月の一時生産休止で製品在庫が少なくなっていたところに需要が急激に戻ったので、工場の現場は少しでも生産を増やそうと必死になっている。農機を含め、北米事業は少なくとも2021年前半まで今の好調が続くと見ている。

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