精神医療の現場で感じるストロング系のヤバさ インタビュー/松本俊彦 精神科医

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
拡大
縮小
精神科医の松本俊彦氏は「依存症を専門とする精神科医師の間では、『ストロング系はヤバい』という認識が以前からあった」と話す(記者撮影)

特集「ストロング系チューハイの是非」の他の記事を読む

「ストロングZEROは『危険ドラッグ』として規制したほうがよいのではないか。半ば本気でそう思うことがよくあります」
2019年の大晦日。このような書き出しで始まる投稿をある医師がフェイスブックで行った。その後、この発言はネットを中心に波紋を広げることになる。
投稿者は、国立精神・神経医療研究センター病院の薬物依存症センター長を務める松本俊彦氏。過激とも受け取れる発言をしたのはなぜか。インタビューをしたところ、背景にあったのは精神医療の臨床現場で感じる危機感だった。

エチルアルコールは依存性薬物

――ストロング系チューハイを危険ドラッグとみなす発言は、ネットニュースでも大きく報じられ話題になりました。酒類メーカーの反論などありましたか。

メーカーからクレームを受けると思っておびえていたが、それはなかった。まあ、放っておけということなのだろう。

一方、同業である精神科医たちからは、「そうだよね」と同意してくれる声が多かった。依存症を専門とする精神科医師の間では、「ストロング系はヤバい」という認識が以前からあった。ストロング系が登場してから、患者の酔い方がおかしくなってきていると臨床現場では感じている。

家庭の問題や不安定な雇用環境などが原因で生きづらさを抱えている人たちは、お酒を楽しむために飲んでいるのではなく、つらい気持ちを紛らわすため、意識を飛ばすために飲む。しんどい1日が終わった後、自分へのご褒美として飲んで気を失って、そしてトラブルを起こす。

酩酊した状態でコントロールが効かなくなり、リストカットの傷を深く入れてしまう女の子もいる。しらふだったらそこまで切らないのに、ざくざくと切ってしまって大騒ぎを起こす。精神科臨床の現場では、そういう事例をすごく見るようになった。

――先生の専門は薬物依存の治療です。それなのにアルコールの問題に声を上げたのはなぜですか。

次ページ500缶を3本飲んだらおかしな酔い方をする
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内